望診① ー全身を診るー

東洋医学
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momo
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こんにちは。

東洋医学の診断方法」という記事で、弁証(体の状態・病態を分析し、治療方針を立てる一連の方法)に必要な四つの診察方法望診・聞診・問診・切診)の四診法について簡単に説明しました。

  • 望診:視覚を通じて病態を診る方法
  • 聞診:聴覚や嗅覚を用いて病態を診る方法
  • 問診:問いかけることで患者さんの症状や体調を診る方法
  • 切診:触覚を通じて診る方法

今回はそのうちの「望診」について、「全身を診る」「局所を診る」「舌診」の三つに分けてお伝えしていこうと思います。

今回は望診第一弾”全身を診る方法”について説明していきます。

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動画

最初に、これからお伝えする内容を簡単にまとめた動画があります。
こちらを観てからブログを読むとより理解しやすいかもしれません。

望診:視覚で診る

「望診」とは視覚を通じて病態を診る方法のことで、患者さんの顔色や表情、姿勢や歩行、皮膚や舌、爪や髪の艶、体の動きなどを観察します。

全体望診は「望神・望色・望形体・望姿態」から成り、しんしょくけいたいをみていきます。

神は生命力、色は五臓と氣血の盛衰、形体は体質と臓腑の精氣、姿態は活動性と氣の運動の変化を総合的に把握します。これにより、虚実・寒熱・表裏・氣血津液の偏りを、非接触的かつ直感的に洞察する古典的診断体系です。

望診の流れ

まずは望診はどのように行うのか、大まかな流れをみていきましょう。

1)望神:生命力や精神状態を観る

「神」の状態を観ます。神氣(目の光彩・活氣)、顔全体の雰囲氣(生氣・だるさ)、姿勢・動作、応対の態度など、全体の「氣配」を観ます。

2)望色:顔色を観る

顔の色(青赤黄白黒)、質(浮沈・清濁・微甚・散搏・沢夭)、艶、乾燥、光沢を観ます。

3)望形態:体格・姿勢・筋肉骨格を観る

瘦せ/肥満、姿勢(丸まり・胸の張り)、歩き方、動作の速さ、筋肉・皮膚の状態などを観ます。

4)局所を観る

  • 目:黄疸・充血・くぼみ
  • 鼻:乾燥・湿、赤み
  • 唇:色・乾燥・ひび割れ
  • 耳:黒ずみ・乾燥
  • 歯ぐき:腫脹・色
  • 皮膚:乾湿・弾力・色
  • 毛髪:艶・脱毛
  • 爪:色・割れ・縦筋・形

5)望舌 :舌を観る

舌質(淡・紅・紫)、舌苔(薄・厚・無苔・黄・黒)、潤い(湿潤・乾燥)、形(胖大・痩薄・裂紋・歯痕)を観ます。

momo
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まずは身体の全体を観て、それから局所を観ていくのですね!

望神:神氣を観る

望診で一番大切なのは神氣を診ることです。
「神氣」は「しん」とも呼ばれ、感情・意識・睡眠・思惟活動など全ての生命活動や精神活動を指します。

現存する最古の医学書『黄帝内経・霊枢 本神第八』には
「神を失うものは死し、神を得るものは生く」とあります。

そしてこの神を診ることを「望神」といいます。
望神:病人の精神の良否、意識の明晰さの程度、動作や反応がどうかなどを観察し、臓腑陰陽氣血の盛衰と疾病の軽重・予後を判定します。

神の変化は5つあります。

得神(有神)

精神状態が良好で意識が清明、目には力と輝きがあり敏活、発する言語は明瞭で正常、物事に対する反応も機敏で、四肢は思いのままに動く状態。精が充ち足りていて神が旺盛、健康な状態。たとえ他の症状が重く現れていても、予後は一般的に良好で早い時期に回復します。

少神(神氣不足)

「精神・意識・生命力の現れが弱い状態」を指します。神氣不足で精氣が軽度に損傷され、臓腑機能がやや低下しています。意識は保たれていますが、活力・精神活動が弱っている状態です。

具体的には

  • 表情がぼんやりしている、無表情
  • 目の力や輝きは乏しい
  • 声が小さく、弱々しい
  • 話しかけても返答がゆっくり
  • 姿勢がだるそう、動作はやや鈍い
  • 精神的に無気力、意欲がない

失神(無神)

神の活動がほとんど消失し、動作が鈍く反応も遅い、意識が失われた状態を指します。
生命機能が危機的に低下していることを示し、極めて重篤な兆候です。

具体的には

  • 反応がない、呼びかけに答えない
  • 刺激(痛み・揺さぶり)にも反応が乏しいまたは無い → 昏睡・昏倒様
  • 目を開けない、目に光がない
  • 眼球の動きがない
  • 顔色が青白い・灰白
  • 唇が紫っぽい、血色がない
  • 力が抜けてぐったりしている
  • 四肢が冷たい、脈が弱いまたは触れにくい
  • 呼吸が浅い・微弱、あるいは不規則
  • 声が出ない、呼吸音も弱い

仮神

重病で生命力(正氣)がほとんど尽きかけている人が、一時的に精神や表情が明るくなり、元氣を取り戻したように見える状態を指します。これは「回光返照」とも呼ばれ、実際には正氣の余勢が一瞬だけ表面に現れた偽りの回復で、まもなく状態が急速に悪化する危険な兆候です。臨終の直前に多いです。

一見元氣に見えるものの、目の輝きや言動は不自然で浮ついており、身体は衰弱したままです。臨床では誤って「よくなった」と判断しないことが重要です。

具体的には

  • 重病で衰弱していた人が、突然元気に話し始める
  • 顔色がぱっと明るくなる
  • 周囲が「良くなった!」と思う

4つをまとめると・・・・

状態有神少神失神仮神
神の状態充実し活動が旺盛衰えて弱いほぼ消失一時的に回復したように見える偽りの神
意識清明・反応良好ぼんやり、集中力低下反応ほぼなし・昏迷急に元気に見えるが不安定
目の光明るく輝きあり光が弱い、鈍い光がない、開けない急に目が冴えて見えるが不自然
顔色血色良く潤いありくすむ、艶がない蒼白・灰白・暗く乾く一時的に紅潮・笑顔が出るが虚浮した感じ
はっきり、力あり小さい・弱いほとんど出ない急にハキハキ話せるが力なく浮つく
体の状態動作に活力・姿勢良い動作ゆっくり、だるそう力なく弛緩急に動けるが、ふらつき・消耗感
気血の状態気血充実気血不足・虚証気脱/陽脱/閉塞気血の余勢、枯れる前の「灯火の爆ぜ」
病状の意味回復可能、生理機能良好虚弱、病勢進行危篤・危急死兆のことが多い(回光返照)

神志失常(神乱)

神が乱れて精神活動が正常に働かなくなった状態を指します。思考や感情、言動が不安定になり、興奮したり錯乱したり、逆に抑うつ的になったりするなど、精神面での失調が目立ちます。

多くは痰濁・火邪・瘀血などが心神を擾乱し、精神の統御が失われることで生じ、言動異常・不安・幻覚・多弁・失笑・哭泣こっきゅう・興奮といった症状がみられます。正常な「神の安定」が破れ、精神機能が混乱した状態と理解します。

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このように望診ではまず「神」の状態を診ます。

具体的には

  • 意識ははっきりしているか
  • 精神状態は良好か
  • 目に輝きや力はあるか、動きは敏活か
  • 反応は機敏か遅いか鈍いか
  • 四肢は思いのままに動いているか

患者さんと接した第一印象がとても大切です。患者さんの活力(神氣)の有無を観ることは、自然治癒力や恒常性維持機能を促して疾病の改善が期待できるか否かを判断することができるからです。

望色ぼうしょく:顔色の変化を観る

「望色」とは、顔色や皮膚の色調・光沢・変化を観察して、臓腑や氣血津液、寒熱虚実の状態を判断する方法です。

色 :色の変化で、青・赤・黄・白・黒の5種の色調変化を診ていきます。
   五色によって氣血の変化を観察します。これは臓腑の盛衰を反映しています。
光沢:皮膚の艶で、水分があって艶があるか、水分がなくて乾燥しているかの変化を診ます。
   光沢によって神氣の変化を観察します。これは精氣の盛衰を反映しています。

なぜ顔でわかるのか?

『黄帝内経・霊枢』邪氣蔵府病形態篇には以下のように書かれています。

十二の経脈と三百六十五絡の氣血はすべて顔面に上って空竅に走る

これは、「全身の経絡を流れる氣血は全て顔面に上って、五臓の氣が出入りするための抜け道(空竅=鼻・口・耳・眼)がある。」ということを説明しています。

つまり、顔の色と光沢の変化を観察することは、身体内部の氣血津液の不足や有余、寒熱病態を診ることになるのです。

望色十法

望色十法とは清の医家、汪宏の書籍『望診遵経』によるもので、人体の体表面に現れる肌の色のくすみや、乾燥状態の変化を診ることで病位・病勢・病性の軽重を診るものです。

十法とは色の浮沈ふちん清濁せいだく微甚びじん散搏さんはく沢夭たくようを指します。

○色の浮沈:表裏を観る

浮:色が皮膚の間に表れたもの。病が表にあることを示します。→ 表証
  色が上に浮かび、浅いところにある感じで具体的には発熱で顔が赤くなっている状態です。
  
沈:色が皮膚の内側に隠れているもの。病が裏にあることを示します。→ 裏証
  色が皮膚の奥に沈み、重く深いところにある感じで具体的には顔がどす黒く沈んだ状態です。

浮から沈になれば病氣が重くなり、沈から浮になれば病氣が軽くなることを示します。

○色の清濁:陰陽を観る

清:色がはっきりしていること。明るければ陽にあることを示します。→ 陽性
  明るくて透明感がある。

濁:色が濁っていること。暗ければ陰にあることを示します。→ 陰性
  暗くくすんでいるような感じ。

清から濁になれば病氣が重くなり、濁から清になれば病氣が軽くなることを示します。

○色の微甚:病勢の強弱を観る(虚実を観る)

微:肌はほんのり淡い黄色で、色が薄い状態で、正氣が足りていない状態です。→ 虚証

甚:色が濃いことを示しており、例えば高熱で顔が真っ赤に火照っている状態です。邪氣が盛んであることを示します。→ 実証

○色の散搏:急性・慢性を観る

散:色がまだらに表れている状態です。→ 急性疾患
搏:搏とは覆われていることで、色が込み合っている状態です。→ 慢性疾患

散から搏になれば邪氣が集合し病が重くなり、搏から散になれば邪氣が退散し回復します。

○色の沢夭:軽重を観る

沢:氣色の潤いや艶がある状態。→ 軽症
夭:氣色がやつれて枯渇している状態。→ 重症

沢から夭になれば精氣の衰えを示し、夭から沢になれば精氣が回復することを示します。

顔色

健康的な人の顔は明るく潤っていて、光沢があって血色の良い顔をしています。これを常色と言います。精神・氣血・津液が充足して臓腑機能が正常であることを示します。
黄色人種の場合、赤黄色っぽいのが健康的な顔色です。

顔面は心系の支配領域で、特に心臓系の働きが鮮明に反映されています。
血色は、全身五系統(肝心脾肺腎)の強弱バランスの働きを心臓系を通して示された現象なので、全身の健否の状態が顔面に現れます。

五色(青・赤・黄・白・黒)がバランスよく自然の働きに順応している血色が健康色(常色)ですが、自然に逆らった血色や体質に逆らった血色など、発病状態で顔面に現れる異常な色や光沢を病色と言います。

病的な五色

観察点意味・判断具体例
青み痛証、寒証、瘀血証、驚風、肝の病顔色が青い・青紫
赤み・赤ら顔熱証、しんの病顔面紅潮・頬紅
黄ばみ脾虚証、湿証、黄疸
脾の病
顔面が黄色・消痩
白さ・蒼白虚証、寒証、血虚証、陽虚証、肺の病顔面蒼白
黒み・暗い腎虚証、瘀血証、寒証
水飲証、腎の病
顔面がスス黒い

具体的には・・・

  • 白くて艶がない → 氣血両虚(氣と血が不足した状態)
  • 白くむくみ、湿っぽい
     脾虚(胃腸の働きが弱り、消化吸収やエネルギー作りが上手くいかない)
     陽虚(体を温めたり動かしたりする力が不足して、冷えや元気のなさが出る状態)
     水湿(体の中にな水分がたまって、巡りが悪くなっている状態)
  • 赤く潮紅、イライラ 
     心火(心と体に熱がこもり、興奮や不安が強まった状態)
     陰虚火旺(体の潤いや冷ます力が不足して、内側に熱がこもる状態)
  • 黄色くてくすむ
     脾虚
     食積(食べすぎや消化不良で、食べ物が胃腸に滞っている状態)
     湿困(体の中に湿氣(余分な水分)がたまって、重だるく不調になる状態)
  • 黒くて乾燥 
     腎陰虚(体の潤いとエネルギーの基礎が不足して、乾きやほてりが出る状態)     
     血虚・瘀血(血の流れが悪くなって、体の中で滞っている状態)
  • 黒くて湿っぽい
     腎陽虚(体を温める力の源である腎のエネルギーが不足し、冷えや活力の低下が起こる) 
     寒水(冷えによって体の水分の巡りが滞り、冷たい症状が現れる状態)
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このように顔を観ることで、臓腑や氣血の状態を推測することができるのですね!

望形体:体格・体つきを観る

「望形体」とは、形体(肉体)の強弱や肥痩、肢体、体形を観察します。
 肉付き、骨格、筋肉量、肥瘦(ひそう:痩せ/太り)、発育の状態などを観て、これらを総合して、氣血津液の状態や臓腑機能の強弱、病の虚実を判断します。

形体の肥痩

体の肥痩だけで健康を判断することではなく、氣と形の関係をよく観ることが重要となります。

体型意味する傾向
肥(肥満)痰湿が多い、脾虚、陽虚傾向、氣の流れが滞りやすい
瘦(痩せ)陰血不足、氣血不足、肝腎虚など

痰湿:体の中の余分な水分が滞って、粘り気のある不要物(痰)としてたまる状態。
脾虚:胃腸の働きが弱り、消化吸収やエネルギー作りが上手くいかない状態。
陽虚:体を温めたり動かしたりする力が不足して、冷えや元気のなさが出る状態。
陰虚:体の潤いや冷ます力が不足して、内側に熱がこもる状態。

具体例

  • 痩せていて声が小さい → 氣血不足傾向
  • 太ってむくみがある → 痰湿・脾虚傾向
  • 肥満で食欲がない  → 氣虚・痰湿過剰
  • 極度の痩せ → 精氣衰弱

形体の強弱

形体の強弱は、骨格の太さ、筋肉の厚さ、皮膚の湿度、胸郭の広さなどを観察します。

  • 強壮:氣血が充実しているので、骨格は太く大きく、肌肉・内臓は剛健、皮膚は潤沢で、胸郭
       も広くて厚く、食欲も旺盛です。病氣に対する抵抗力も強く、治療しやすくて予後も良
       いことを示しています。
  • 衰弱:氣虚、血虚の状態なので、骨格は細くて小さく、肌肉は衰え、内臓も弱い。皮膚は枯渇
       し、胸郭は狭くて薄く、元氣がなくて少食で無力です。病氣に対する抵抗力も弱く、発
       病すると治療が難しく予後も悪いことを示しています。

体形

人にはそれぞれの体形がありますが、体形は全身の五基本である肝・心・脾・肺・腎に分けることができます。体形を観察することで大まかな体質を把握することができます。

肝系タイプ(木)

頭が小さく、面長・長身で、体は真っ直ぐでやや痩せ型。手足は小さく、声は高音を発し、心労しやすく、細かいことを氣にしがちなところがあります。春夏には強いですが、秋冬には弱い傾向があります。胃が弱い人も多く、無理をして体力を極度に低下させると、神経系の病氣や筋肉や腱の症状が出たりします。

心系タイプ(火)

頭が小さく尖り頭で、鎖骨が太く吊り上がった肩をしていて手足は小さいですが、肩背腰腹の調和がとれています。胸郭中央部がよく発達していて胸が厚い人が多いです。また、血色も良く絶えず赤みを帯びており、肉付きは少なめで引き締まっています。体温が高くなりやすく、少し過激な運動をすると体中が熱くなって発汗することが多いです。春夏には強いですが、秋冬には弱いです。

脾系タイプ(土)

全体的に肉付きが良く、胸も厚く、お腹周りも豊かで、手足なども太くてしっかりしています。頭が大きく顔は四角や丸顔で、首は太くて短めです。肩は肉付きがあって厚くがっしりとしています。四肢も太くて、手はグローブのような四角い感じです。顔も体もふっくらとした肉付きの良い体形です。秋冬には強いですが、春夏には弱いです。

肺系タイプ(金)

頭・顔が小さめで、骨格が細いです。鼻孔が大きく、鼻部を囲んでいる頬骨が発達しています。全体的に筋肉が引き締まっていて、呼吸量が多いのでいかり肩です。手足は小さめですが、胸幅は大きいです。秋冬に強いですが、春夏には弱いです。

腎系タイプ(水)

丸顔でふっくらとしていて、彫りが深く、頭も顔も大きめです。肩はやや小さめで丸みを帯びていますが、臀部は肩に比べてよく発達していてお腹も太いです。腰から下が長く、体形のバランスがそれなりにとれています。肌肉が柔らかく、もち肌のようにぽちゃぽちゃした感じがあります。

momo
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大きく5つのタイプに分けていますが、実際はこんなにはっきりと分けられるものではなく「混合タイプ」の人がほとんどです!

例えば、肝系に肺系が加わっている場合は、顔は面長だけれど、体はいかり肩であるとか、心系に腎系が加わっていると、頭は尖って毛髪が少ないのに、体型は丸みがあって肉付きがぽちゃぽちゃしているなど。

特徴の多く現れている方の力が勝っていると考え、体形だけで診断するのではなく、他のものと合わせて総合的に判断していくのが良いです。

望姿態:体の状態(姿勢)を観る

望姿態とは、動静姿勢・動作・歩行・態度・振る舞いを観察することです。
簡単に言えば、“体の使い方”と“動きの質”から体の状態を読み取るものです。

陰陽寒熱虚実を観る

陽は動を主り、陰は静を主ります。動静を観ることで病や症状の陰陽寒熱虚実の変化を推測することができます。

  • 陽証:動きが軽い、せわしなく落ち着かない、動くことを好む、仰ぐ、伸ばす
  • 陰証:動くのがおっくう、動作がゆっくり、府せる、縮める
  • 熱証:暑がり、薄着を好む、
  • 寒証:丸く縮まり、衣服を重ね着している、温まるのを好む
  • 実証:声が大きく、興奮気味で無駄に動作が多い、多弁、活動的
  • 虚証:元氣がなく、疲労感があり、声に力がなく、言葉数が少ない、倦怠感

その他

患者さんの動作から様々なことを推測していきます。

姿勢

所見推測
姿勢に力がない、前屈み氣虚、陽虚、腎虚
背筋が伸びず、ぐったり病勢が強い、正氣虚
胸をはる、体が硬い肝気鬱結、実証、陽盛
身体が細かく震える肝風内動、陰血不足

歩行・動作

所見推測
歩くのが遅く、だるそう氣虚、湿困、脾虚
歩行ふらつき腎虚、脳髄不足、血虚
動作が急く、落ち着かない肝火亢盛、心神不安、陰虚火旺
動きがぎこちない氣滞血瘀、筋骨の滞り

発声や動きの勢い

所見推測
声が弱い・息切れ肺氣虚、氣虚
大声で勢いある実熱、陽盛
動作が持続しない氣虚
たまに痤攣やふるえ肝風、痰熱、陰血虚

特徴的な病態例

望姿態病態
体を丸め、弱々しい氣虚・陽虚
手足を縮め寒がる寒証、陽虚
手足を広げ、動きが多い熱証、実証
動き少なく無力氣血両虚、脾腎両虚
体がこわばる・緊張肝氣鬱結、寒邪
手足の震え・痙攣肝風内動、陰血虚

こんな患者さんが来たら、あなたはどう判断しますか?

【症例】
50代の女性。最近、体が重だるく、朝起きてもすっきりしないという。
顔色はくすみ、やや黄白色。皮膚には張りがなく、むくみ気味。
目はややぼんやりしていて、言葉数が少なく、声にも覇気がない。
体格はぽっちゃりしており、動作はゆっくり。動くとすぐ息が切れる。

【観察ポイント】
望神・望色・望形体・望姿態の4つの面から、この人の状態をどう判断しますか?

【解答例】

望 神:目の輝きが乏しいとのことなので「少神」と考えられます。声に覇氣がない、動作がゆっ
    くりなのも神氣不足とも考えられます。
望 色:顔色が黄白でくすみ光沢に欠けたり、皮膚にハリがなく浮腫み氣味なのは、脾の運化失調
    による湿の停滞を示します。
望形体:体格は肥満傾向で全体にむくみっぽいので、痰湿が内にたまりやすい体質であると考え
    らえます。
望姿態:動作が緩慢で、重だるそうに動くのは「湿」や「痰」の特徴です。動くとすぐ息が切れる
    のは氣虚とも考えられますが、痰湿が溜まって氣血津液の流れが阻害されている氣滞によ
    るものとも考えられます。

総合判断
これらのことから、この患者は「痰湿阻滞」の状態にあるのではないかと考えられます。
脾の運化が弱まり、氣血津液がうまく巡らずに痰湿となって滞り、氣の流れを阻んでいるのではないかと思います。
治療の要点は「燥湿化痰・健脾利氣」と言って、湿を取り除き、脾を健やかにし、氣を巡らせることです。

momo
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いかがでしたか?望診だけでも色々と推測することが可能だということがわかりますね!

次回は望診の「局所を観る」をお伝えしていこうと思います!

参考文献

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