皆さんは自分の立ち姿を鏡で見たことがあるでしょうか?
人のことは良く見えるけれど、自分の姿って自分が一番よくわかっていないものの一つかもしれません。
姿勢によっては若く見えたり老けて見えたり、だらしなく見えたり立派に見えたり、自信あり気に見えたりまたはその逆だったり・・・、姿勢一つで人の印象というもの変わるものです。
また、姿勢は周りから見たその人の印象だけではなく、実際にその人自身の健康にも大きく影響を与えます。実は肩こり、頭痛、腰痛、首痛などなど、様々な症状を引き起こした最初の発端は「悪い姿勢」だったかもしれないのです。
「姿勢」が崩れることで巻き肩・猫背・ストレートネックとなり、これらが心身に与える影響はとても大きなものです。
今回は姿勢が崩れることによって起こった「巻き肩・猫背・ストレートネック」が心身に与える影響について、そしてその改善方法をお伝えしていきたいと思います。
巻き肩・猫背・ストレートネックってなに?
巻き肩・猫背・ストレートネックとはどういう身体状態のことをいうのでしょうか?
巻き肩
巻き肩とは肩が体の前に出て、内側に巻いている状態のことを言います。
本来、耳の真下に肩の出っぱりが来るのが正常ですが、巻き肩になると前に出た状態になります。ただ、巻き肩の人はほとんどが猫背になっていたり、ストレートネックになっているので、下の絵のように首も前に出てしまっています。
猫背
本来私たちの背骨は頸椎(首)は前カーブ、胸椎は後ろカーブ、腰椎は前カーブをしていて、緩やかなS字状になっています。しかし、猫背はなんらかの要因で胸椎の後ろカーブがきつくなり、背中が丸く出っぱった状態になることを言います。
ストレートネック
上記でもお伝えしましたが、本来、頸椎は前カーブになっていて、首にかかる頭の重さの負担を軽減しています。しかし、うつむき状態が続いたり、姿勢が悪くなることで、頸椎に大きな負担がかかるようになると、頸椎のカーブが消失してストレートネックになります。
セルフチェック
自分の姿勢は自分では良くわからないし、「あなたは姿勢が悪いよ」だなんて、よほど親しい仲でしか言ってはくれないだろうし、自分が巻き肩なのか猫背なのかストレートネックなのかなんて自分では分かりませんよね。
そういう人の為に、セルフチェックの方法をお伝えします。
- 壁際に背を向けてまっすぐに立ちます。「気をつけ」のポーズです。でも力は抜いてください。
- 後頭部・肩甲骨・お尻・かかとの4点が壁につくように立ちます。
- この時、上記4点が壁につけば正しい姿勢と言えます。
- 猫背・巻き肩に関しては
壁に対して両肩が少し浮いている程度(手のひらが入るくらい)であれば正常です。
明らかに浮いている(拳一個分入る)場合は猫背(巻き肩)です。 - ストレートネックに関しては
後頭部はわずかにつかないけれど、意識して体に力を入れて頭を立てればつく。→軽度
後頭部が全くつかないけれど、どうにかこうにか意識してつけようとすればつく。→中度
頭と首が大きく前に出ていて、どうやっても後頭部が壁につかない。→重度
猫背の人もストレートネックの人もみんなに共通していることは、頭が突き出ているということです。
どうしてなるの?
これらは全て姿勢の悪さから起こります。
姿勢は一晩で悪くなるものではありません。通常少しずつ、自分でも気づかないうちに悪くなっていきます。その期間は数年から数十年かかります。
本来の正しい姿勢というのは、耳・肩・骨盤・くるぶしが一直線に並ぶ状態を言います。しかし、デスクワーク、パソコン、スマホ、読書、端末ゲーム、料理、洗い物、電車での居眠りなどなど、私たちは日々の生活でうつむいたり、頭を前に出す行為を日常的に行っています。
すると、頭の位置がズレてそれが固定化してしまいます。特に悪い姿勢は座っている時につくられます。例えば、パソコンなどをしていて前かがみになって背中を丸くして、頭を突き出してしまったり、座っている時に椅子に深く腰掛けず、背中から腰を丸めて座る座り方をしていても、頭が突き出た姿勢になってしまいます。
これらの状態が長時間続いたり日常的になると、次第に筋肉はその姿勢のまま硬くなってしてしまい、その影響でその姿勢に合わせて骨まで歪んでいきます。スポーツ選手が毎日トレーニングをすることで体づくりをしているように、私たちも毎日の生活の中で頭を突き出す姿勢を形作ってしまっているのです。そうすると頭を突き出す姿勢に必要な筋肉が発達し、必要のない筋肉は衰え、筋肉に過度な緊張や負担が生じて、肩は巻き肩となり胸椎のカーブも極端になって猫背になり、首のカーブは消失してストレートネックとなります。
どんな影響があるの?
巻き肩・猫背・ストレートネックからくる影響は様々です。
肩こり、腰痛、頭痛、首の痛み、手のしびれ、冷え、むくみ、肩の痛み、不眠など。
上記で何度もお伝えしていますが、本来首の頸椎にはゆるやかな前カーブがあります。これはこのカーブをクッションのように利用することで3〜5キログラムある頭の負担を軽減しています。そして、この重い頭を効率よく支えるには頭が首の真上にくることです。
しかし、姿勢が悪くなって頭が前に出てくると、頭は首の真上ではなく首の前方に位置することになるので、別の力を加えないと頭を支えることができません。つまり、その別の力は肩周りの筋肉になります。頭が前に出れば出るほど、頭を支えるために首や肩周辺の筋肉の負担が増加し、その結果、肩こり・首の痛み・頭痛などが生じてきます。
首への負担が増加し首のカーブが消失するよって、頸椎上部に頭の荷重負担がかかってくると、後頭骨と第一頸椎の間にある自律神経が圧迫され、手のしびれ・めまい・耳鳴り・不眠などの不定愁訴もあらわれてくることがあります。
そして、頭を突き出す姿勢は肩だけではなく体全体にも悪影響を与えます。体にはバランスコントロール機能が備わっているので、肩周辺の筋肉が硬化し猫背・ストレートネックになると、体はできるだけ負担のかからない姿勢に変形しようと腰を後ろに反らしたり、お尻を突き出す姿勢になります。すると痩せていてもお腹が出てきたり、腰の筋肉が硬化し腰痛が起こります。
巻き肩・猫背・ストレートネックの人は肩も腰も硬くなっており背中全体が緊張状態にあります。筋肉が緊張状態にあると血流が悪くなり、冷えやむくみが起こることもあります。
このように巻き肩・猫背・ストレートネックは様々な症状を引き起こします。しかし、逆を言えば、巻き肩・猫背・ストレートネックを治すことで、様々な症状が消えていくとも言えます。
*もちろんですが上記の症状が巻き肩・猫背・ストレートネックが原因だった場合に限ります。
巻き肩・猫背・ストレートネックの治し方
これから巻き肩・猫背・ストレートネックを治すいくつかの方法をご紹介します。
- 腕振り体操
①立った状態で、下ろした手のひらを正面に向けます。
②手のひらを正面に向けたまま、腕を前後に振ります。なるべく後ろに振ることを意識します。
*1日1回、1分だけでも良いです。 - アゴ押し体操
①正しい姿勢で体の位置は動かさず、目線は正面にして頭をできるだけ前方向に出します。
②アゴに手を当てて水平に力を入れてアゴを後ろに強く押し込みます。目線は正面のまま維持します。
*一度に多数回行うより、日常生活の様々な場面で繰り返し行うのが効果的です。 - 全身のびのび体操
①あお向けに寝たまま、両腕が耳の真横にくるように指先まで伸ばし、足は踵ではなく指先から伸ばします。
②手足をできるだけ遠くに力を入れて、呼吸は止めずに5秒間伸ばします。
③5秒間伸ばしたら、脱力して5秒間休みます。
④これを3回繰り返します。
⑤次はうつ伏せになって同じように手足を伸ばします。これも伸ばすのを5秒間、脱力を5秒間、3回繰り返します。(うつ伏せになれない人は④までで大丈夫です。) - 姿勢を良くする体操
①セルフチェックの時のように壁際に背を向けてまっすぐに立ちます。
②後頭部が壁につかない人は、頭を後ろに倒して頭を壁につけてください。
③②の姿勢のまま、アゴを軽く引いて、頭のてっぺんからひもで天井方向に引っ張られているような感覚で少しずつ首を伸ばします。5秒数えながら首を伸ばし、一気に脱力して5秒間休みます。これを3回繰り返します。
毎日この4つを全てやる必要はありません。普段の生活で手のひらを正面に向けて歩くことを意識したり、テレビをみている時、パソコンをしている時などに時々意識してアゴを押してみたり、朝起きた時に全身を伸ばしたり・・・と、普段の生活の中で自然に取り入れていくことで姿勢の改善が期待できます。
正しい姿勢を取り戻すことで、健康を取り戻していきましょう!
参考文献
寝たままできるキセキの「のび体操」 – 5秒の「のび」が一生寝たきりにならない体を作る! – 奇跡の30秒背骨ストレッチ (王様文庫) 頭を5cmずらせば腰痛・肩こりはすっきり治る! 一日3分の姿勢矯正エクササイズ (角川新書) あなたの首の痛み、肩こりはストレートネックが原因です! 肩こり、首痛、ねこ背が2週間で解消! 「巻き肩」を治す