今回は「脾臓」の働きについて見ていきます。
西洋医学での主な「脾臓」の働きは
1)古くなった赤血球を破壊・除去する。
2)リンパ球や抗体を作り免疫系に関与する。
3)血小板を貯蔵する。
です。
では、東洋医学ではどのような働きをしているのでしょうか。
脾は営を蔵し、後天の本となる
脾は胃と協力して飲食物の消化・吸収を行い、飲食物を栄養物質(水穀の精微)に転化し後天の精を取り出します。この後天の精とは飲食物から得られる精のことで、気・血・津液のもととなるものです。そして、脾は栄養物質を全身に運びます。
この働きのことを「運化」と言います。ですから、脾は「運化を主る」とも言われています。そして、この運化の作用には「水穀精微の運化」と「水液の運化」があります。
水穀精微の運化
食べた物は胃や小腸によって消化吸収されますが、食べ物から栄養物質(水穀の精微)に転化するのは脾の運化作用です。そして、その栄養物質が全身に散布されるのも脾の運化作用によるものです。
逆を言えば、脾の運化作用に問題が起きると、食物の精気を全身に輸送することができなくなり、腹張・食欲不振・倦怠感・消化不良などが現れ、これによって肌肉が痩せるなどの症状が出ます。
水液の運化
脾は飲食物から吸収した津液を肺に送ります。そして、脾は津液を作り出し全身に送ります。また、各臓器にある余分な水分を肺や腎臓に転送するという働きもあります。
この働きに問題が起きると、体内に余分な水液が滞り、身体が重く感じたり、浮腫が生じます。
昇清を主る
脾気には上昇するという運動作用があり、運化に際して消化吸収した水穀精微を心臓・肺・頭に送り、気・血・津液に変化させ、全身に送り出します。
また、脾には臓腑・器官が下がらないよう、内臓を正常な位置に維持する働きもあります。
これらの働きのことを「昇清」と言います。
昇清がうまく働かないと、水穀は運化せず気血が化生されないので、めまいや全身倦怠、無力、慢性下痢などが起こったり、正常な内臓の位置も維持されず、胃下垂や子宮脱出や脱肛などが起こります。
統血を主る
脾胃が運化した水穀の精微から営気が作られ、この営気は血と共に脈中を巡ります。脾は血液を統轄する機能があり、営気を脈中に送ることによって、血液が脈外へ漏れることを防ぎ、全身に栄養を巡らす。
この脾の働きのことを「統血作用」と言います。
統血に問題があると、出血しやすくなったり、血便・血尿・月経過多・子宮出血などが起こります。
脾の志は「思」
「思」とは思考・思慮を示します。色々考えて何かを解決させようと思うことを指します。脾はこの「思」という精神活動を生み出します。
ですから、思い過ぎると脾の働きに影響を及ぼし、気が停滞して、食欲不振・腹張・めまいなどが現れます。
脾は肌肉を主る
肌肉は主として水穀の精微によって生成されます。そして、水穀の精微を全身に送るのは脾の運化による働きです。ですから、筋肉の状態を見ることで、脾胃の働き具合がわかります。
また、四肢も脾胃が運化した水穀の精微によって滋養され、脾の健全な働きにより正常な運動が行えます。脾に問題が生じると、筋骨肌肉は養われず倦怠・萎縮や痺れを招きます。
脾は口に開竅し、その状態は唇に反映する
口と唇は飲食物の取り入れ口で、脾胃と密接な関係にあります。例えば、唇の厚さはその人の脾の強弱を表しています。また、唇は全身の気血の状態も表しており、脾の運化が正常であれば、唇は紅潤で光沢がありますが、運化に問題があれば、唇は蒼白くツヤがなくなります。
また、脾の運化は味覚とも関係しており、運化作用が正常であれば、味覚も正常ですが、問題があれば、味を感じなくなったり、口の中が甘くなったり苦くなったり、粘るなどの味覚異常が出ます。
脾の液は涎(唾液)
脾は口と通じており、口から出る液は涎です。ですから、脾の状態は涎にも現れます。
脾が正常であれば唾液は口の中を潤し、口腔粘膜を保護します。また、嚥下や消化を助けます。しかし、脾の働きに問題があれば、唾液の分泌量の調整ができず、口の中が乾いたり、逆に多すぎて口から涎が垂れたりします。
いかがでしたか?
東洋医学と西洋医学での「脾」の働きは随分違いましたね。
あまりにも働きに違いがあるので、東洋医学で言われている「脾」は西洋医学でいう「膵臓」のことではないかと言われていたり、「脾臓」と「膵臓」のどちらも含むとも言われていたりします。
ただ、東洋医学には「三焦」と言って、西洋医学のどの臓器にも当てはまらないような働きをするものもありますので、必ずしも西洋医学の知識がそのまま東洋医学に当てはまるとは限らないのですよね。
東洋医学を理解しやすいように西洋医学の知識と比較していくと良いのではないかと思っています。