
こんにちは!
西洋医学では病気や症状を診断する時、血液検査をしたり、レントゲンをとったり、それらの情報から診断しますよね。
では、東洋医学ではどのように判断するのでしょうか?今回は、東洋医学の診断方法をお伝えしていきます!
体の表面は体内の異常を映し出す鏡
元代の名医 朱丹渓(しゅ・たんけい/朱震亨 1281–1358)によって書かれた『丹渓心法』の中に以下のような文があります。
欲知其内者、当以観其外;診于外者、以知其内。蓋有諸内者、形諸外。
(その内を知らんと欲する者は、まさにその外をもって観るべし。
外を診する者は、これをもって内を知るなり。
おおよそ内にある者は、必ず外にあらわれるなり。)
現代語訳
「体の内側(臓腑や気血、精神の働き)の状態を知ろうとするなら、まず外に現れる徴候(顔色・舌・皮膚・声・脈など)をよく観察しなければならない。外部を診察することによって内部の状態を知ることができる。なぜなら、体の内部に起こった変化は必ず外に現れるからである。」
これは現存する最古の医学書『黄帝内経・素問』の中にある
有諸内必形諸外
(内にあるものは、必ず外に形をあらわす。)
という考えを踏まえ、臨床家の立場からより実践的に、「内を知るには外を観る」という診察原則を明文化したのが朱丹渓です。

つまり、東洋医学において体の内部の状態を調べる方法というのは、舌・脈・顔色・皮膚の状態・声などなど、体の外側を診ていけば良いということですね!
四診法(ししんほう)
ここで必要となるのが「四診法」です。
四診とは「望診・聞診・問診・切診」の四つの方法のことです。
望診:見る診察
患者さんの顔色や表情、姿勢や歩行、皮膚や舌、爪や髪の艶、体の動きなどを観察します。
- 顔色(氣血の状態や五臓との関係)
- 目の輝き(精神活動の状態)
- 体格や姿勢(虚実の判断)
- 舌の状態(色・形・苔などから内臓の状態を推測)
- 皮膚・爪・髪の艶など(気血の充実度や五臓の働き)
例えば:顔色が青白い人は「寒」や「氣血の不足」が疑われます。また、赤みが強い人は「熱」を示すことがあります。
聞診:聞く・嗅ぐ診察
患者さんの声、呼吸の音、体臭、口臭などを診ます。
- 声の大きさや張り(氣の充実度)
- 呼吸の音(肺の働きや痰の有無)
- 咳の音(乾燥か湿か、実か虚か)
- 体臭・口臭(内臓の熱や湿の有無)
例えば:声が弱々しいのは「氣虚」、大声で途切れないのは「実熱」を示すことがあります。
問診:聞き取り・問う診察
患者さんに自覚症状や生活習慣、病歴などを詳しく質問して、病の原因や性質を探ります。
- 主訴(いつから・何がどのように始まったか)
- 症状の性質(痛みの性質・時間帯・増悪や改善因子)
- 寒熱(寒い・熱い)
- 汗(出る・出ない)
- 頭身(痛みやだるさ)
- 小便・大便
- 飲食(食欲・消化)
- 睡眠(入眠障害・多夢)
- 胸腹(胸・腹の違和感)
- 聴覚(耳鳴り・難聴)
- 口舌(口の乾き、味覚)
- 旧病(過去の病氣)
- 原因(発症のきっかけ)
- アレルギー
- 家族の病歴
体質や生活環境も含めて全体像を把握できるよう質問をします。
切診:触って診る診察
患者さんの脈・皮膚・腹部・経絡・ツボなどに触れて診る方法です。
- 脈診(手首の脈を三箇所で診て、臓腑や氣血の状態を判断します。)
- 腹診(腹部を触って、冷え・張り・痛み・しこりなどを確認します。)
- 触診(皮膚の温度や湿り具合い、筋肉の強張りや経絡の反応などを確認します。)
例えば:脈が弱く細いのは「氣血不足」、強く早いのは「熱盛」を示すことがあります。
四診合参(ししんごうさん)
この指針を総合して「四診合参」と言います。
東洋医学ではこの総合的な観察から「証(しょう)=身体の状態の型」を立てて、治療方針を決めていきます。
弁証法
東洋医学でいう「弁証法」は、「弁証」と「治法」を合わせた考え方です。
- 弁証:「弁」は判断・分析・識別の意味があり、「証」は証拠を意味します。つまり、「弁証」とは疾病によって現れた病の原因・性質・所在・正邪の盛衰などを分析して、体の状態を正しく判断すること。
- 治法:その弁証結果に基づいて、どのように治療するかを決めること。
したがって、東洋医学の「弁証法」とは「証(体の状態・病態)を分析し、治療方針を立てる一連の方法論」のことを指します。

四診から得た情報をもとに、弁証法を用いて病証を決定していきます。次はよく用いられる弁証法について学んでいきましょう!
八綱弁証(はちこうべんしょう)
八綱弁証とは表・裏・寒・熱・虚・実・陰・陽の八つの証候で病位・病性・正氣と邪氣の力関係などを判別する弁証方法です。
対立関係 | 内容の概要 |
---|---|
表(ひょう)―裏(り) | 病が身体のどの深さにあるか(浅いか深いか)を示す→病位 |
寒(かん)―熱(ねつ) | 病の性質が冷えているか、熱をもっているか →病性(病情) |
虚(きょ)―実(じつ) | 体の正氣(抵抗力)の強弱と、邪氣(病因)の勢いのバランス→正邪の闘争(病勢) |
陰(いん)―陽(よう) | 上記を総合して、全体の性質をまとめた根本分類→病証類鑑別 |
1)表 ― 裏
- 表証:病が体表や浅い部分(皮膚・筋肉・経絡)にあり、風邪など初期の段階。
→ 発熱・悪寒・頭痛・脈浮・鼻水など。 - 裏証:病が臓腑など深い部分に入った状態。
→ 腹痛・便秘・口渇・下痢・腹部膨満・脈沈など。
2)寒 ― 熱
- 寒証:冷えの性質。陽の不足や寒邪の侵入。
→ 悪寒・手足の冷え・顔面蒼白・尿量が多い・舌苔白・脈遅など。 - 熱証:熱の性質。陰の不足や熱邪の侵入。
→ 発熱・口渇・顔面紅潮・尿量が少ない・煩燥・舌苔黄・脈数など。
3) 虚 ― 実
- 虚証:体の正氣(エネルギー)が不足している状態。
→ 自汗・倦怠感・息切れ・小声・筋に弾力性がない・下痢・脈虚など。 - 実証:邪氣(病因)が強く、体がそれに抵抗している状態。
→ 無汗・呼吸が荒い・便秘・筋に弾力性がある・尿の回数が少ない・拒按(押されると痛い)・脈実など。
4) 陰 ― 陽
- 陽証:表・熱・実など、活動的で外向的な性質。
→ 発熱・充血・顔面紅潮・活動的・会話が多い・手足が温かい・舌質紅・脈数など。 - 陰証:裏・寒・虚など、沈静的で内向的な性質。
→ 冷え・倦怠感・顔面蒼白・悪寒・活気がない・会話が少ない・手足が冷たい・舌質淡胖・脈遅など。

実際の診察では、これらを組み合わせて病の性質を整理します。
例えば
- 「表熱実証」→ 風邪の初期で発熱・喉の痛み・脈浮数 → 清熱・発汗させる。
- 「裏寒虚証」→ 慢性の冷え・倦怠・食欲不振 → 温補して正氣を助ける。
氣血津液弁証
東洋医学の生理と病理の根幹をなす概念のひとつで、人体の基本的な構成要素である「氣・血・津液」の変調から、病の性質を判断する弁証法です。
八綱弁証よりも一歩踏み込んで、病の実質的な内容(何が不足・停滞しているのか)を見極める体系です。
要素 | 主な働き | 病的変化の種類 |
---|---|---|
氣 | 生命活動のエネルギー | 氣虚・氣滞・氣逆・気陥・氣閉・氣脱 |
血 | 栄養・滋養の物質 | 血虚・血瘀・血熱・血寒 |
津液 | 体内の正常な水分 | 津液不足・水湿・痰飲 |
1)氣病弁証
- 氣虚証:氣が不足している状態。生命力の低下。
→眩暈・倦怠感・息切れ・声が小さい・自汗・脈虚無力など - 氣陥証:氣の不足や下陥によって臓腑を持ち上げる力が弱まった状態。
→氣虚の症状・下痢・脱肛・子宮下垂・胃下垂・舌淡苔白・脈弱など - 氣滞証:氣の流れが滞っている状態。
→脹痛・刺痛(遊走性)・胸や脇の張り・溜息・腹部膨満・情緒不安・脈弦など - 氣逆証:氣の流れが逆行する。
→頭痛・めまい・咳・嘔吐・げっぷなど - 氣閉証:氣の流れが閉塞して通じなくなった状態。
→意識障害・昏倒・歯を食いしばる・脈滑数か弦数で有力など - 氣脱証:体内の氣が急激に失われて生命力が衰えた危険な状態。
→顔面蒼白・昏倒・呼吸微弱・失禁・舌淡・脈微欲絶(脈が非常に弱く今にも途絶えそうな状態)など
2)血病弁証
- 血虚証:血が不足し、滋養できない状態。
→顔色蒼白か萎黄・めまい・動悸・月経量少・舌淡苔白・脈細無力など - 血瘀証:血流が滞っている状態。
→刺すような痛み・固定痛・月経血の塊・舌質紫暗など - 血熱証:血に熱がこもっている状態。
→出血傾向(吐血・血尿)・発熱・口渇・崩漏・舌絳・脈細数など - 血寒証:血に寒邪が侵入して血行が滞る状態
→チアノーゼ・手足痛・温かいのを好む・舌暗苔白・脈沈遅渋など
3)氣血同病弁証
「氣は血の帥であり、血は氣の母である。」と言われるように、氣と血は相互依存の関係にあるので、一方に病変が発生すると必ず他方に影響が及びます。
- 氣滞血瘀証:氣の流れが滞ることで血の巡りも悪くなり、瘀血が生じた状態
→刺すような痛み・月経不順・顔色暗紫・舌質暗紫など。氣の滞りと血の停滞が同時に見られます。 - 氣虚血瘀証:氣の不足によって血を推動・運行する力が弱まり、血が滞って瘀血が生じた状態
→疲れやすい・顔色が淡暗・刺すような痛み・舌質が淡紫など。「虚」と「瘀」が同時に存在 - 氣血両虚証:氣も血も不足した虚弱な状態
→疲労感・息切れ・めまい・顔色や唇の蒼白・動悸・不眠など。身体の活力と栄養の両方が欠けています。 - 氣虚失血証:氣が不足して血を統摂(とんせつ)する力を失い、出血を起こす病証
→顔色蒼白・息切れ・倦怠感・少気懶言・自汗・不正出血や血便など。氣虚による血の漏れ出しが特徴です。 - 氣随血脱証:大量出血によって血とともに氣も急速に失われた危急の状態
→顔面蒼白・四肢冷却・大汗・息微弱・脈微欲絶など。氣血がともに脱するため、意識消失や昏厥(気絶)を伴うこともあります。
4)津液弁証
津液とは、体内の正常な水分を総称したもので、汗・唾液・涙・関節液なども含みます。
- 津液不足証:体液が減少して潤いが足りない状態。
→口渇、皮膚乾燥、便秘、尿少、舌紅少津・脈細数など - 水液停滞証:水液代謝を主る肺・脾・腎の機能失調によって水分代謝が悪くなっている状態。
①水湿→水分代謝が悪く、余分な水が滞る。むくみ、重だるさ、胃もたれ、舌苔白膩。
②痰飲→湿がさらに停滞・濃縮して痰となる。咳痰、めまい、胸苦しさ、動悸。

八綱弁証が「病の方向性(寒・熱・虚・実など)」を示すのに対し、
気血津液弁証は「何が乱れているか」を具体的に示しているのですね。
この両者を組み合わせることで、治療原則が明確になります。
臓腑弁証
「臓腑弁証」とは、五臓六腑それぞれの生理機能や病理的変化に基づいて病を分析・判断する方法です。つまり、「どの臓腑に問題があるか」「どの機能が失調しているか」を見極める弁証です。
五臓六腑とは
- 五臓:肝・心・脾・肺・腎(主に“蔵”の働き=貯蔵・統括)
- 六腑:胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦(主に“伝化”の働き=受納・運化・排泄)
を担当しています。
1)五臓弁証(臓の弁証)
【肝】:疏泄(氣の流れを調える)・蔵血(血を蓄える)・情志を司る
- 肝氣鬱結:抑うつ・怒りっぽい・胸悶・胸脇の張り・ため息・月経不順・月経痛・梅核氣
- 肝火上炎:怒りっぽい・煩燥・頭痛・めまい・顔面紅潮・目が充血・便秘・月経過多
- 肝血虚: めまい・こむら返り・目のかすみ・手足の痺れ・月経量少
- 肝陽上亢:怒りっぽい・頭痛・耳鳴り・顔面紅潮・めまい・不眠・多夢・動悸・健忘・舌紅
- 肝風内動:眩暈(倒れそうになる)・頭痛・手足の痺れ・振戦・手足蠕動・言語障害など
【心(しん)】:血脈を主り・神志(精神・意識)を司る
- 心氣虚:動悸・息切れ・倦怠感・自汗・疲労倦怠・無氣力
- 心陽虚:動悸・顔色が暗い・四肢冷・脈細弱・胸痛
- 心血虚:不眠・動悸・健忘・多夢・めまい・顔色が悪い
- 心陰虚:不眠・口渇・ほてり・寝汗・舌紅
- 心火亢盛: 心煩・不眠・多夢・口渇・顔面紅潮・脈数・血尿・譫語
- 痰迷心竅:精神抑うつ・意識混濁・行動異常・独り言
- 痰火擾心:心煩・不眠・多夢・口渇・顔面紅潮・呼吸が粗い・便秘・言語錯乱・狂燥状態
- 心血瘀阻:動悸・胸内苦悶・胸痛・舌紫暗・四肢厥冷・意識昏迷・脈微
【脾(ひ)】:運化(水穀を気血に変える)・昇清・統血
- 脾気虚:食欲不振・食後の腹部脹満・無氣力・疲れやすい・軟便・顔色萎黄色・体が痩せる
- 脾陽虚:脾氣虚の症状に加えて、冷えが強く・むくみや下痢がある
- 脾氣下陥(中氣下陥):氣が下がる → 脾氣虚に加えて、眩暈・便意頻繁・脱肛・内臓下垂
- 脾不統血:氣虚により血が漏れる → 脾氣虚に加えて、鼻出血・皮下出血・血便・血尿・紫斑
- 湿邪困脾:頭重・口が粘る・食欲減退・悪心嘔吐・腹痛・泥状便・体が重い・浮腫
【肺】:宣発粛降(呼吸・氣の出し入れ)・氣を主り・水道を通調
- 肺気虚:息切れ・咳嗽・自汗・寒がる
- 肺陰虚:乾いた咳・口や咽喉が乾燥・寝汗・潮熱
- 寒邪犯肺 : 咳嗽・鼻塞・鼻水(透明)・悪寒・発熱・頭痛・無汗
- 熱邪壅肺 : 発熱・悪風悪寒・頭痛・鼻塞・鼻水(混濁)・口渇・喀痰(黄色)
- 燥邪犯肺 : 乾咳・喀痰(少量、粘稠、喀出しにくい)
- 痰湿阻肺:胸悶・咳嗽・喀痰(白色、多量、喀出しやすい)
【腎】:精を蔵し・水を主り・納気を助ける。骨・髄・耳・発育を司る
- 腎陽虚:足腰が冷えてだるい・寒がり・手足の冷え・精神萎縮・不妊
- 腎陰虚:足腰がだるい・眩暈・耳鳴・健忘・視力減退・不眠・潮熱・ほてり・寝汗・口渇
- 腎氣不固:精神疲労・頻尿・足腰だるい・夜間頻尿
- 腎精不足:不妊・精子不育・小児の発達の遅れ・早老現象
- 腎不納氣:喘息・短氣・自汗・膝腰のだるさ・脈弱
2)六腑弁証(腑の弁証)
六腑は「受納・消化・排泄」に関わる機能。臓に比べると変化は急性です。
腑 | 代表的な病証 | 主な症状 |
---|---|---|
胆 | 肝胆湿熱・肝鬱痰擾 | 口が苦い・脇肋部脹痛・黄疸・食欲減退・寒熱往来・ため息・悪心嘔吐 |
胃 | 胃火(熱)・胃寒証・食滞胃脘・胃陰不足・胃氣不足 | 胃脘部冷痛・胃脘部灼痛・胸焼け・ゲップ・嘔吐など |
小腸 | 小腸実熱・小腸虚寒・小腸氣痛 | 心煩・不眠・血尿・排尿痛 |
大腸 | 大腸湿熱・大腸液虧 | 腹痛・便秘・下痢・腹満・排出困難 |
膀胱 | 膀胱湿熱 | 頻尿・血尿・排尿痛・尿結石・発熱・腰痛 |
このように、臓腑弁証は症状の原因を臓腑レベルで特定する診断体系です。

人体の各臓器は生理機能上密接な関係を持っています。ですから、二つ以上の臓腑の病変が同時に見られることがあります。
例えば:心腎不交・肝腎陰虚・脾腎陽虚・心肺氣虚・肝胃不和など
これを臓腑兼病弁証と言います。
経絡弁証
経絡についてはこちらの記事をご覧ください!
(以下は『わかりやすい臨床中医診断学』著者:王財源を参照しています。)
経絡は体内と体表をつないでいる連絡通路です。体内の情報を体表へ送ったり、体表での情報を体内に伝えます。ですから、臓腑の異常は関連している経絡上に反応点として現れます。
1)手太陰肺経の証候
- 肺部の脹満感・喘咳・胸悶
- 息切れ
- 手掌の火照り
- 悪寒発熱・自汗
- 上肢全面外側痛
- 咽喉腫痛
2)手陽明大腸経の証候
- 歯痛・頚部の腫れ、咽喉部の腫痛、鼻の症状
- 便秘・下痢・脱肛
- 上肢外側から示指の疼痛
3)足陽明胃経の証候
- 顔面麻痺・鼻汁・鼻出血
- 歯痛・前頚部の腫れ・鼻の症状
- 発熱
- 嘔吐・消化吸収の異常
- 前胸部の疼痛
- 鼠径部・腹部・下肢全面・足背の疼痛
- 躁鬱状態
4)足太陰脾経の証候
- 腹部膨満感・嘔吐・下痢・軟便
- 全身の倦怠感
- 心煩・前胸部・心下部・腋下の圧迫感
- 舌の強張りと痛み
- 下肢内側の腫れ痛み・鼠径部や膝の腫痛
5)手少陰心経の証候
- 心悸・心臓部痛・脇の痛み
- 健忘・不眠
- 咽喉部の乾燥・口渇して飲みたがる
- 目が黄色い
- 上肢前面内側の痛み・手掌の火照りと痛み
6)手太陽小腸経の証候
- 腸鳴・泄瀉・小便の量が少ない
- 咽喉痛・顎の腫れ
- 目が黄色・難聴
- 頸が腫れ後ろを振り返ることができない 上肢後面内側の痛み
7)足太陽膀胱経の証候
- 排尿困難・遺尿・小便不利(排尿の回数が少なく、尿量も少ない)・痔
- 悪寒発熱
- 頭痛・目の痛み・鼻血・項部の強張り
- 膝腓腹筋・足の小指の麻痺、外踝・脊柱の疼痛
8)足少陰腎経の証候
- 腰部の倦怠感・腰部痛
- インポテンツ・遺精・月経不順
- 浮腫
- 空腹感はあるが食欲がない
- 顔色の黒ずみ
- 血痰・痩せ・立ちくらみ
- 呼吸が苦しく咳き込む
- 心配性・ビクビクする
- 寝ることを好んで起きたがらない
- 口腔内の炎症・咽喉頭部の腫れ・舌の乾燥・心煩・心痛・小便が赤い
- 石柱と大腿内側の痛み・冷え・だるさ・痺れ、足底の火照り
9)手厥陰心包経の証候
- 手掌の火照り・腋の腫れ・上肢のひきつ李・季肋部のつかえ
- 胸悶・心痛・心悸・心煩
- 笑いが止まらない・精神が不安定
10)手少陽三焦経の証候
- 第4指の麻痺・耳後ろー肩上部ー上肢後面の疼痛・目尻から頬の疼痛・咽喉頭部の炎症
- 浮腫・腹脹・小便不利・遺尿
- 汗
- 難聴
11)足少陽胆経の証候
- 口が苦い
- ため息・脇肋痛
- 側頭痛・咽頭の乾燥・眩暈・顔色がくすむ・カサカサして艶がない
- 難聴・耳鳴・目尻や顎関節の痛み
- マラリア性の熱病・頚部のリンパ節結核
- 寝返りが打てない
- 体幹外側・下肢外側・鎖骨上窩の痛み、足の第4趾の麻痺・足外反して火照る
12)足厥陰肝経の証候
- 胸脇部の脹痛・ため息・イライラ・怒りやすい・目眩・顔色がすすけて青黒い・疝気(筋肉が引きつれて痛む)
- 嘔吐
- 痙攣
- 遺尿・尿閉・下痢
- 喉の渇き
- 腰痛
- 頭頂痛
13)督脈の証候
- 背骨の強張り・頭痛
- 大人の癲疾(てんかんなど)・小人の驚癇(小児てんかん・熱性てんかんなど)
- 痔・足の冷え・下腹部の症状・遺尿・不妊・水腫・心痛
14)任脈の証候
- 月経異常
- 腹部皮膚の痛み・痒み
- 疝気(睾丸腫痛)
- 遺尿・小便不利

経絡弁証は鍼灸においてはとりわけ重要な弁証です。経絡は外邪の侵入経路であるとともに、臓腑に病変があると経絡を介して体表にその病変を伝えます。
ですから、経脈病証を把握していれば、どの経絡、あるいはどの臓腑に病変があるかを判断することができ、治療に大変役に立ちます!
病邪弁証・六経弁証・衛氣営血弁証・三焦弁証
これまで説明してきた弁証法以外に「病邪弁証」「六経弁証」「衛氣営血弁証」「三焦弁証」などがあります。
- 病邪弁証:病因の中の外因(六淫)や病理産物である痰飲、瘀血などの病邪が人体に及ぼす状態を理解し、病邪の弁別を行う。このほか内因、不内外因が人体に与える影響の弁別も重要となります。
- 六経弁証:外感熱病の進展に伴って現れる異なる病理変化を、太陽病証・陽明病証・少陽病証・太陰病証・少陰病証・厥陰病証の6種類の病証に概括するものです。
- 衛氣営血弁証:八綱弁償において外感病、特に温病と判断された病態について行う弁証法で、体の外から内に衛分・気分・営分・血分の4つに分類します。
- 三焦弁証:温病(外感の急性熱病の総称)の発展過程を3つの段階に分けてます。上焦は肺経の病証を主とし、温病の初期としています。中焦は温病の最盛期とし、下焦はその末期としています。

いかがでしたか?東洋医学における診断方法について理解できましたか?
まとめると・・・
東洋医学では「四診(ししん)」と呼ばれる総合的な診察法を用いて身体の情報を総合し、「八綱弁証」や「臓腑弁証」などの理論に基づき、身体全体のバランスの乱れや病邪の性質・部位などを明らかにし、個々に合った治療方針を立てて施術していくのですね。
参考文献