腱鞘炎とばね指

手・腕・足・脚
スポンサーリンク

指を曲げ伸ばしする際にスムーズにできず、
カクンカクンと引っ掛かりがあったり、
曲げたまま動かなくなることはないでしょうか?


もしかしたらそれは「ばね指」かもしれません。

なぜ「ばね指」になるのか

体はたくさんの骨や筋肉などからできています。
私たちが体を動かすことができるのは、
骨と筋肉をつなげる「腱」という結合組織があるからです。
この「腱」は筋肉の端にあって骨や靭帯などに付着しています。


手指から指先にかけてある「腱」
ヒモのようになって骨にくっついており、
この腱が動くことで指を動かすことができます。

そして、この「腱」が骨から離れないように
腱を包んでいるトンネルのような組織が「腱鞘」で、
手指の所々にあります。


「腱鞘炎」
とよく言われているのは、
使いすぎや様々な理由で、
この「腱鞘」が厚くなったり硬くなったりして、
腱鞘の中を通る「腱」と「腱鞘」がこすれ合い、
腱鞘に炎症が起きて痛みや腫れが起きることです。


そして、この「腱鞘炎」が進行すると起こるのが「ばね指」です。


「ばね指」は厚くなったり硬くなった「腱鞘」の中を通る「腱」にも炎症が生じ、
腱が腫れてしまいます。すると、指を曲げたときに腱の腫れた部分が腱鞘に引っ掛かり、
スムーズに指の曲げ伸ばしができなくなります。


それがひどくなると指を曲げたまま動かせなくなるので、
曲がった指を戻そうと無理やり指を引っ張ると、
腱の引っ掛かりが外れて腱が腱鞘を通る時にカクンとばね現象が生じます。


これが「ばね指」です。
別名を「弾発指(だんぱつし)」と言います。

ばね指の原因

腱鞘炎は手の使いすぎによる物理的な刺激が原因のこともあれば、
時に指の刺し傷が原因で細菌が感染し炎症を起こすこともあります。


更年期の女性や妊娠出産期の女性は閉経や妊娠によってホルモンバランスが変化し、
骨密度や筋力が低下したり、腱や腱鞘も弱くなって傷みやすくなり、
腱鞘炎やばね指を起こしやすくなります。


また、糖尿病、関節リウマチ、透析患者の方は末梢の血行が悪いので、
ばね指が発生しやすくなります。

ばね指の症状と治療

症状は指の動きがスムーズでなくなり、痛み、腫れ、熱感が生じたりします。
進行するとばね現象が生じて、さらに悪化すると指が拘縮して動かなくなります。
親指や中指に多くみられますが、他の指にもみられることがあります。


治療は「保存療法」「手術療法」があります。
「保存療法」
① テーピングなどをして安静にする。
② 痛み止めの薬を飲むか塗る。
③ 超音波や電気などをかけて治療をする。
④ 腱鞘内にステロイド注射をする。

「手術療法」
腱鞘の切開手術をします。

腱鞘炎とばね指を東洋医学的視点からみる

1)経絡の異常

鍼灸では部分的な病変があれば、
どのような疾患でも全てはその部位を流れている経絡の異常だと考えます。
そして虚実寒熱に分け、全身状態を診て治療を行います。


親指や示指だったら肺経や大腸経
中指だったら心包経
薬指だったら三焦経
小指だったら小腸経や心経

の異常を疑います。



2)虚実と証

東洋医学的には腱鞘炎は陰血虚の病です。
「陰虚」とは陰の性質を持つ津液(血以外の全ての体液)が不足した状態
「血虚」とは血の不足や血の機能が衰えた状態


ばね指は湿熱です。
「湿熱」とは気や血がうまく巡らず、「水」と「熱」が過剰になっている状態です。


陰虚湿熱には密接な関係があり、
陰虚が原因で津液や血の働きが悪くなったり、
津液や血の働きが悪くなったことで陰虚になったりします。


また、腱鞘炎やばね指の人の「」(病の状態)は肝虚証が多いです。
肝虚証は血液を貯蔵している肝の血が不足し、肝の機能が低下している状態のことです。




3)肝の働き

東洋医学における肝の働きとは
蔵血作用
血は肝に蓄えられ、心の力を借りて経脈を流れ体中に巡っています。
この血の量を調節しているのが肝です。

疏泄(そせつ)作用
疏泄とは流れや排泄のことで、情緒や気血津液の運行を円滑に分散・発散する働きのことです。
つまり、肝は気血の流れを体のすみずみまで円滑に行き渡らせる働きをしています。



4)肝と関係のある部位・感情・五味・その他

目  … 「肝は目を主る」(『素問』陰陽応象大論篇第五)
筋  … 「肝は筋を生ず」(『素問』陰陽応象大論篇第五)
爪  … 「肝の表徴は爪に現る」(『素問』六節蔵象篇第九)
怒り … 「怒りが過ぎると肝の機能が傷害される」(『素問』陰陽応象大論篇第五)
酸味 … 「肝は酸を欲す」(『素問』五蔵生成篇第十)
他にも「肝は心身を緊張させるために生ずる疲労を受ける本となる器官」(『素問』六節蔵象篇第九)



5)まとめ

これらのことから東洋医学的視点で腱鞘炎やばね指をみてみると、
疲労や怒り、食生活や生活習慣など何らかの原因で肝の働きが弱り、
全身または患部に気血が十分にめぐらず、
肝と関係のある筋にも影響が出て腱や腱鞘の働きも弱くなり、
そのような時に手などを酷使したり、他の病と重なった結果、
腱鞘炎やばね指が引き起こされたと考えられます。
*全ての腱鞘炎やばね指が上記の原因であるとは限りません。


使えるツボ(経穴)

1)足のツボ(足には肝の経絡があります)

曲泉(きょくせん)・陰谷(いんこく)・大敦(だいとん)・湧泉(ゆうせん)・中封(ちゅうほう)
足臨泣(あしりんきゅう)・太衝(たいしょう)

2)手のツボ

手三里(てさんり)・合谷(ごうこく)・曲池(きょくち)・郄門(げきもん)・温溜(おんる)
陽渓(ようけい)

3)肩周辺のツボ

腱鞘炎やばね指が起こる人は肩や肩甲骨周囲筋肉の凝りが強い人が多いので、
肩や背部全体の凝りをほぐすことも大事です。

膏肓(こうこう)・肩井(けんせい)・大椎(だいつい)・天柱(てんちゅう)・風池(ふうち)
風門(ふうもん)・身柱(しんちゅう)・天髎(てんりょう)

アドバイス

1)腱鞘炎の人

① 睡眠をよくとること。
② 不自然な発汗を避けること。(サウナなど)
③ 過労しないこと。
④ 栄養剤を飲み過ぎないこと。
⑤ 香辛料を控えること。
⑥ 昼は良く動いて、夜は早く寝ること。
⑦ リラックスすること。
⑧ くよくよしないこと。
⑨ 血を増やす食べ物を食べること。(人参・ほうれん草・黒胡麻・ひじき・黒豆・プルーンなど)


2)ばね指の人

上記のことにプラスして
① 食べ過ぎ、飲み過ぎに注意すること。
② こってりしたものをとりすぎないこと。
③ 甘いもの、辛いもの、しょっぱいものをとりすぎないこと。
④ ビール・カクテルなどお酒を飲み過ぎないこと。
⑤ チーズ・牛乳・ヨーグルト・刺身・生肉をとらないこと。
⑥ 運動をして体の内側から汗をかくこと。


3)その他

腱鞘炎やばね指だけに限らず、
どの症状にも共通して大切なことは血流を良くすることです。
その為には体を温めることがとても大事です。

入浴・こんにゃく湿布・足湯などをして、
体を芯から温めるようにしてください。


こんにゃく湿布は弱った肝の働きを高めるにもとても良いと思います。
是非、やってみて下さい。

タイトルとURLをコピーしました