経絡とは?
普段の生活の中で「経絡」という言葉はほとんど耳にしないかと思いますが、鍼灸をやる上で必ず必要になってくる知識です。
人の体には「気」「血」が流れていて、それらは「経絡」という通路を通っていると東洋医学では考えられています。
人体を縦方向に走る通路を「経脈(けいみゃく)」、経脈から分枝した網状の枝で身体各部に分布するものを「絡脈(らくみゃく)」と言い、この二つの総称を「経絡」と呼んでいます。
経絡の3つの作用
経絡には3つの作用があります。
気・血の運搬(生理作用)
臓腑や皮膚、筋肉、骨などに気血を巡らせ、人体の健全な生理活動を維持する働きがあります。
病邪の伝達(病理作用)
気血の過不足や外邪の侵入などで、病邪が経絡を通って体内に入ってきたり、移動したりします。
経絡は疾病が生じ、その病態に応じて診断するところでもあります。
刺激と薬効の伝導(治療作用)
鍼などによる刺激、または漢方薬などによる薬効が経絡を通って患部に届いていきます。
つまり、経絡は治療を施すところでもあります。
このように作用的には血管のような、神経のような役割をしているのですが、
経絡は物理的に確認できるものではありません。
ただ、経絡現象と言って、経絡の存在を証明するような反応を示す人がごく稀にいます。
経絡の種類
「経脈」には正経十二経脈、奇経八脈、十二経別があります。
「絡脈」には十五別絡、孫絡、浮絡があります。
今回は経絡の主体となっている経脈の中の「正経十二経脈」について少し詳しくお伝えしていきます!
正経十二経脈とは
この写真にある経穴君の体には、たくさんの縦線が描かれてあります。
この縦線が「経脈」というもので、体の前後真ん中にある線(督脈・任脈)以外の線を「正経十二経脈」と言っています。
正経十二経脈には名前のとおり、12種類の経脈があります。
手の太陰肺経、手の陽明大腸経、足の陽明胃経、足の太陰脾経、手の少陰心経、手の太陽小腸経、
足の太陽膀胱経、足の少陰腎経、手の厥陰心包経、手の少陽三焦経、足の少陽胆経、足の厥陰肝経
これらを見てお気づきかと思いますが、各経脈は肝・心・脾・肺・腎の五臓と心包、
そして、胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦の六腑に属しており、
更に、臓は陰(太陰・少陰・厥陰)に、腑は陽(陽明・少陽・太陽)に属していることが分かります。
これは中国の前漢から後漢の時代に、陰陽論や五行説が医学に浸透したことで、
三陰三陽の十二経脈が天の十二月や地の十二水との相応において認識されたり、
体内の五臓六腑と関連づけられるようになったため、このような経絡学説が完成しました。
でも、2000年以上も昔に作られた学説が、今日まで受け継がれているということは、
やはりそれ相当の実績があるからだと思わざるをえないですよね。
正経十二経脈の走行
上記で説明した正経十二経脈の走行には順番があります。
中焦(脾胃など)で作られた気血は肺の経脈に運ばれ、大腸経、胃経、脾経・・・と順番に流れ、
最後は肝の経脈に至り、再び中焦を通って肺に注がれます。
「手の〜」とか「足の〜」とありますが、これは走行する部位を名称の一部に加えたものです。
例えば、手の太陰肺経は手を走行しており、足の陽明胃経は足を走行しています。
また、上記の横並びになっている経脈同士は表裏(陰陽)の関係にあります。
例えば、裏(陰)である手の太陰肺経は途中で大腸と連絡しており、
同じように表(陽)である手の陽明大腸経は途中で肺と連絡し合っています。
矢印のそばにある「手」「足」「頭」「胸」というのは、経脈が次の経脈に移行する場所を示しています。
これを見ると、陰経脈から陽経脈に変わるのは手で、陽経脈どうしは頭で、
陽経脈から陰経脈に変わるのは足で、陰経脈どうしは胸で変わることが分かります。
このような順序で、気血は経脈を走行していることが分かります。
経穴
これらの経脈上にあって、気が出入りしている場所を「経穴」と言います。
一般的には「ツボ」と言われているものです。
経穴の数は肺経は11穴、大腸経は20穴、胃経は45穴、膀胱経は67穴・・・というように、経脈によって違います。
中国最古の医学書である『黄帝内経』には、人体の経穴の数は365穴であると書かれてあるのですが、現在、世界保健機構(WHO)は361穴と定めています。
そして、経穴を刺激することで経脈の異常を治療し身体を整えていくのが鍼灸なのです。
いかがでしたか?
経絡について少しでも理解していただけたら嬉しいです。
次回からは正経十二経脈の一つ一つについて詳しくみていきたいと思います。