こんにちは。
皆さんは体のどこかに刺すような痛み、精神障害、機能障害、皮膚の変色、冷えなどはありませんか?
もし、これらの症状があったなら、それは「瘀血(おけつ)」が原因かもしれません。
瘀血(おけつ)とは
瘀血とは東洋医学の言葉で
「血液が身体のどこかで巡りが悪くなり、正常な血液としての機能を失った状態」
「循環の停滞した血液」
「血管外に漏れ出た血液」
「血液の運行が円滑でない状態」
「古くなった血」
などと言われているものです。
血液は細胞に酸素や栄養を送り、細胞でできた老廃物や炭酸ガスを回収する働きがあります。
しかし、何らかの原因で血液の流れが悪くなり、細胞に酸素や栄養を十分に送れず、
また、老廃物や炭酸ガスを回収できなくなり、血管内に老廃物や古い血が溜まってしまいます。
それが「瘀血」と言われる状態です。
現代医学的にみると、瘀血は循環障害、特に末梢動静脈系の「微小循環障害」を指しています。
現存する中国最古の医学書と言われている『黄帝内経』や約200年前に書かれたとされる『傷寒雑病論』に「瘀血」に関する記載があります。
先人は「古くて流れない血液は身体に良くない」と認識していたことがわかります!
瘀血によって起こる病気
血栓症、動脈硬化、血管炎、頭痛、脳梗塞、精神神経障害、認知症、シミ(肝斑)、歯周病、健忘、冠状動脈硬化症、心筋梗塞、狭心症、肺梗塞などの循環器疾患、手術痕の痛み、消化管出血、ストレス潰瘍、吐血、更年期障害、生理異常と生理痛、不妊症、子宮内膜症、子宮筋腫、肩こり、首、肩など全身のあらゆる部位の関節痛、凍傷、褥瘡、下肢静脈瘤、末梢動脈循環障害、アトピー性皮膚炎、慢性湿疹、乾癬、手紫斑、チアノーゼなど
瘀血が引き起こす症状
1)痛み
瘀血の特徴として「刺すような痛み」があります。
私も子宮内膜症で瘀血があると思うのですが、下腹部に刺すような痛みを感じることがあります。
何かで刺されたかのような鋭い痛みが走っては消え、走っては消えと繰り返されます。
そして、この痛みは固定性で移動することはありません。
2)細絡・皮膚や舌の変化
「細絡」とは下記の写真のようなもので、皮膚の表面にあるとても細くて短い血管の集まりです。
細絡は瘀血があることを示しています。
また、舌の裏が暗紫色になって怒張していたり、皮膚が乾燥して粗くなっていたり、顔色に艶がなく色素沈着があったり、髪の毛もパサパサになるなど、これらも瘀血が原因であるかもしれません。
3)腫塊
瘀血が凝り固まって、「腫塊」を作ります。
4)精神神経症
健忘、精神異常、麻痺、意識障害などを起こすことがあります。
5)冷え
瘀血による血流障害で冷えが起こります。
瘀血の原因
瘀血は血液循環の問題だから「血」に原因があるのではないかと思われますが、
東洋医学では、「気」がなければ「血」を循環させることができません。
東洋医学にこのような言葉があります。
「気行則血行、気止則血止」
これは「気が行けば、則ち血も行く。気が止まれば、則ち血も止まる。」ということです。
「血」の循環は「気」の働きがあって初めて循環することができます。
心気の推動作用、肺気の宣発粛降作用、肝気の疏泄作用、脾気の統血作用、腎気の温煦作用
これらの「気」の働きによって血液は停滞したり、出血することなく循環できます。
つまり、瘀血には「気」と「血」が大きく関係しています。
瘀血はなぜ起こるのか?
1)気虚・気滞
気の働きが低下したり(気虚)気が停滞すること(気滞)で、臓器の働きも低下して瘀血が生じます。気虚や気滞は過度な七情(怒・喜・思・憂・悲・恐・驚)や慢性の疾患による体力の消耗、老化などから起こります。
2)精神的な緊張や不安や怒り
精神的ストレスは心身を緊張させ血流障害を起こし、不安や怒りは気滞を引き起こします。ストレスがあると血液が凝固することもわかっています。
3)外傷や手術痕など
私はお腹や口の中などに手術痕が数カ所あるのですが、これらは健康な皮膚とは違って周囲より盛り上がっていたり、色が変色したりしています。手術痕や傷痕は気血の流れが阻害されるので瘀血が生じます。
4)寒熱
寒いと血管が収縮するので血流が悪くなります。また、熱すぎても火傷となり、血流を阻害する原因となります。
5)体質
先天的に瘀血体質である場合もあります。
こんな人は瘀血かも?
・舌の裏の静脈が怒張している。
・肩、背中、腰、膝裏に細絡がある。(皮膚に細くて短い血管のようなものが多数出ている)
・手術痕の周囲が硬い
・お臍周囲が硬い
・下腹部に何か硬いものがある
・足や手の指先が冷たい
どうしたら瘀血を治せるのか?
1)刺絡療法
鍼灸治療では「刺絡療法」と言って、瀉血による治療があります。
瀉血して古い血を取り出すことで、新しい血液が流れるようになり、症状や病気が良くなっていくというものです。
この瀉血による治療方法は、古くはギリシャ時代やローマ時代から行われており、古代中国はもちろん古代インドなどでも行われてきました。
日本では紀元4世紀には既に用いられており、8世紀に公布された大宝律令には刺絡療法の記載があるようです。
現代でも刺絡療法を取り入れいている鍼灸院がたくさんあります。
以前読んだ本『自然の力で治す』では、ヒルに血を吸わせることで痛みをとっていく治療法が紹介されていました。これは現代でも行われているものです。これも一つの瀉血療法と言えますよね。
2)抜缶療法(吸玉・カッピング)
よく水泳選手の背中に上記写真のような痕が残っているのを見たことはありませんか?
これは抜缶療法によるものです。これも瘀血を改善させる方法の一つです。
抜缶療法をすることで血液循環が改善されます。
抜缶療法を実際に行っている動画がありますので、是非、ご覧ください。
瘀血の予防
では、瘀血を起こさないためにどうしたら良いのでしょうか?
1)精神的ストレスを溜めない
気滞や気虚、七情の原因はストレスによるものが多いと考えられます。ですから、まずはストレスを溜めない生活を送ることが大切です。
2)適度な運動
体を動かさないと気血も動きません。適度な運動はストレス発散にもなりますし、筋肉を動かすことで血流循環も良くなります。
3)食養
現在私たちが口にする食品には必ずと言って良いほど添加物が入っています。入っていないものを探す方が難しいでしょう。また、忙しい生活や面倒くさいとの理由から、インスタント食品を食べている人も多いと思います。
しかし、これらの食品に健全な「気」は入っていません。
気血は私たちが食べたものから作られます。体の元となる食物が添加物でいっぱいだと、健全な体は作られません。
そして、エネルギーばかりが高く、まともな栄養素が入っていない食品からは、健全な気も血も作られないため、体は瘀血状態になります。
体に悪いものを摂り入れるということは、血を汚すことでもあります。
あらゆる病気の原因は血液の汚れからきているとも言われています。
瘀血はある意味「汚血」とも言えるかもしれませんね。
そうならないためにも、無添加の食品を食べたり、無農薬野菜を食べたり、肉を食べないなど、血液を汚さない食品を食べることが大切です。
4)体を温める
現代人は体が冷えています。
外食をすれば、冬でも氷水が出できたり、おしゃれのために寒くても厚着をしない人もいます。
冷えは万病の元と言われるように、冷えをとることで腰痛や神経痛が楽になったり、体がほぐれたり、
疲れが取れたりします。
体を温めれば血液循環も良くなり、瘀血を防ぐことができます。
5)深呼吸
なるべく深い呼吸を意識して生活します。
深い呼吸は細胞に酸素や栄養をしっかり届けてくれて、いらない老廃物や炭酸ガスを排出してくれます。
呼吸を意識した瞑想を取り入れるのも良いかもしれません。
いかがでしたか?
瘀血は様々な病気の原因となっているのですね。
血液の循環を良くする生活は、瘀血の予防と改善につながります。
そして、血液そのものを汚さない食生活も重要になります。
今後は抜缶療法について詳しくご紹介したいと思います!
参考文献